2003年12月

グリーン・カード

アメリカの永住権(グリーン・カード)が欲しいフランス男と、夫婦者でないと貸してもらえない素晴らしい温室付きのアパートを借りたいアメリカ人女性が、それぞれの目的のために書類上だけの偽装結婚。のはずだったのだが、入国管理局の審査のために二人は同居をするはめに。芝居のはずの二人はやがて・・・というラブコメです。ありがちだけど悪くないお話。

最初は風采の上がらないガサツ男だったが、いろいろ知っていく内にだんだん繊細さと才能を見せて格好よくなってくるのだけど、この男が最近のキース・エマーソンにすごく似ている。「ピアノ・レッスン」に出てきたクリス・スクワイアのそっくりさんといい勝負だ。

男は嘘の「作曲家」という設定。パーティでピアノを弾かされることになり、本当は弾けないはずなのに実は上手でしたという展開。ピアノ弾けるとそれだけでポイントがぐっと上がるのは世界中変わらずか。

デッドマン・ウォーキング

ショー・ペンとスーザン・サランドン。サランドンはこの映画でアカデミー賞。

「グリーンマイル」「チョコレート」に続く死刑囚もの。テーマはモロに「死刑」。ただし映画自体は死刑を肯定も否定もしない。原作は主人公である尼僧が書いたものなので、たぶん否定派のはずなのだが、映画では徹底的にバランスを重視していて、被害者の遺族も、加害者の家族も同等に扱われていてフェア。

私自身は、死刑肯定の立場なので感情的に入り込むことはなかったが、記憶に残る映画になったことは確か。主役二人の演技も尋常でなく素晴らしいもの。

愛しのローズマリー

けっこうエラが張ってるし、決してパーフェクトな美人とは思えないんだけど、やっぱなんか魅力的なグウィネス・パルトロウ。「グウィネス」って実際はどんな発音なの?

9歳のときに聞いた父親の遺言で「女性はスタイルのいい美人でなければならない」という考えに凝り固まってしまったハル。偶然エレベーターで乗り合わせた精神療法士に、人物の内面の美しさが外見に見える暗示をかけられて、超肥満体のローズマリーがセクシー美女に見えてしまう。というお話。

「メリーに首ったけ」のファレリー兄弟にしては節度のある演出。娯楽映画としては上出来。外見と内面という青臭いテーマを考えさせるものではなく、ただ笑ってみていればよい。
ブスとデブと身体障害者が悪い外見として同一線上にあったりして、ちょっと危ないところもある。逆に内面の美しい人がボランティアをやっている好事も少し単純すぎ。でも病院で会ったかわいい少女との再会の場面は少し泣けた。

ローズマリーは超肥満であったが故に男性との付き合いもほとんどなく、言い寄ってきたハルと簡単に言い寄られてしまうが、実際問題このハルという男性が魅力的かどうかというと、大変疑問。

いずれにせよ、もう一度催眠術をかけてもらった方がいいんじゃないか。

『超音速漂流』ネルソン・デミル トマス・H.ブロック

昔は軍事がらみの冒険小説が好きでした。クランシーとかポロック、マクリーン、ヒギンズなんかを次々と読んでいたものです。年をとると非現実的なハラハラよりも、普通の人の心の機微みたいなものの方がしっくり来るようになって、だいぶ離れてしまいましたが。

で、この本は年末まとめ読み用に昨日買った一冊。久しぶりにその類のもの。帯に「一気読みを保障します」などと書いてあったので、つい。確かに一気に読んでしまいました。大変面白い。

高高度を飛行する300人乗りの超音速旅客機に、海軍のミサイルが命中。このミサイルは非合法の試験発射だったので、弾頭は積んでいなかったのだけど、高度6万フィートというほとんど宇宙みたいなところで旅客機を貫通。機内はすぐに減圧して無酸素状態。偶然トイレなどの与圧があるところにいた主人公が、この旅客機を操縦して無事に地上に下ろせるかどうかという話。

まあ、これならよくあるストーリーなんだけど、すごいのはそれを阻止しようとする3つの障害。ひとつは、非合法のミサイル訓練とそのミスを隠匿しようとする海軍の将校。もうひとつが、この事故による保険金の支払いを最小限に食い止めようとする航空会社の重役と担当の保険会社。このふたつが別々の考えで、瀕死状態で飛行する旅客機を海に墜落させようとする。

それだけならまだいいが(すでに相当よくないけど)、もうひとつ、この旅客機の乗客の多数が、機内の減圧無酸素状態で、脳に損傷を起こし、生存してはいるものの時に凶暴なゾンビのように主人公たちを殺して行くのだ。普通なら不運の被害者のはずなのに、あまりの描かれよう。

なんという恐ろしい小説。帯に偽りなしでした。

浅田次郎「シェエラザード」

しつこいけど、また浅田次郎。上下巻合わせて700ページ強の労作だったが、年末恒例の得意先周りツアーのおかげで電車に乗る時間が多く、さくっと読んだ。

昭和20年に起きた実在の阿波丸事件がモデル。
『昭和二十年、嵐の台湾沖で、二千三百人の命と膨大な量の金塊を積んだまま沈んだ弥勒丸。その引き揚げ話を持ち込まれた者たちが、次々と不審な死を遂げていく―。いったいこの船の本当の正体は何なのか。それを追求するために喪われた恋人たちの、過去を辿る冒険が始まった。日本人の尊厳を問う感動巨編。』というのがAmazonでの紹介文。

終戦時・失われた2兆円の金塊・東南アジアからの財宝・過去と現代の交錯する構成・民間人多数の死など多くの点で前に読んだ「日輪の遺産」と類似。続けて読むとちょっとアレです。エピローグは「壬生義士伝」のバリエーション。

実際の事件そのもののミステリー性が高いのでドラマとしては確かに面白いのだが、今回現代の登場人物の二人の愛物語がちょっとチープで、緊張感に水を差す。この辺の描写は林真理子風。それと、あまりに都合の良い「偶然の出会い」もちょっとやりすぎ。作家としても気が咎めたのか「偶然は神の意思」などと言い訳めいたことも書いている。

まあ、そのあたりの軽さのおかげで、電車での移動途中に楽しむにはぴったり。来年にはNHKのスペシャルハイビジョンドラマでも見られるらしい。楽しみです。

歌うS沼

671hh9rl.JPG年末のあいさつ回りも渋谷で終了。納会まで2時間余ったので、会社に戻る途中下車で我が家に寄って行った人達。

写真はCDの歌詞カードを見ながらユーミンの「リーインカーネション」を熱唱するS沼。手前の後頭部はアンプに繋いでいないベースを弾いているK池。彼はアコギ1本の伴奏で「フォーク・天国への階段」を歌う。前半はなかなか良かったがさすがにサビは無理のようだった。楽譜を見ると最高音が上のE。ロバート・プラントは偉かった。

突入せよ! 浅間山荘事件

いつか見たいと思っていたのだが、昨夜TVでやっていた。冒頭30分見落としたが、知った話だし大勢に影響はなし。それより終了時刻が遅くて驚いた。

当事者の原作によるもの。監督の人は、今役者として「ラスト・サムライ」に出て注目されているらしい。

色々な切り口で語られる事件だが、私にはプロジェクトXでの格好いいクレーン職人が印象深い。あの鉄球のコントロールは相当難易度が高いらしい。

で、この映画では警察内部の空虚な見栄や権力争いが基本の視点。事実と原作の差異がよくわからないが、とにかく徹底して長野県警が道化役。本当の県警関係者はどういう気持ちでこの映画を見られるのだろうか。事実でないのであれば、大変気の毒なことだ。しかし、誇張はしてあるものの、日本の警察機構だったらいかにもありそうな感じ。

脚本も見方によってはスラプスティックコメディ。感動させるために作ったものではない。

現場が雪の山なので映像は白黒映画のような地味さ。テレビで見たので突入シーンの暗闇は何がなんだかさっぱり見えなかった。

でも最後まで見てしまった。けっこう面白い。

大高未貴「冒険女王」

「おんなひとり旅 乞食列車1万2千キロ」という副題付き。「乞食」はピーじゃないの?

タイトル通りに中国内陸部経由イスタンブールへの女性一人旅。本書によれば相当に危険な「冒険」なのだそうだ。まあ、そうかもな。無事に帰れておめでとう。

著者は1994年のミス日本だそうだ。ついでにミス日本について調べてみた。グランプリは一人だが、「ミス日本」を名乗れるのは毎年10~15人程度はいるらしい。彼女もおそらくその他大勢のミス日本と思われる。本書に出てくる写真ではそう美人には見えない。

フェリス出のミス日本のジャーナリストって肩書きは立派なんだけど、文章や内容がわりと(というかとても)子供じみている。よく言えばストレートなんだけど。普通の日記サイトで女子大生が書きそうな卒業旅行の感想文に近いものがある。心境を“ ”カッコで囲んでその後に「と思った」と言う記述があまりにも小学生っぽい。で、その心境が、まんまの直球。

とはいえ、コースがコースなもんで、それなりに普通の紀行文としては面白く、読めないことはない。「深夜特急」とは次元の違う視点を楽しむには○かな。

川、いつか海へ -6つの愛の物語-

テレビ放送50周年記念ドラマ

野沢尚、倉本聰、三谷幸喜の3人の脚本家が「川」と「浮き玉」をモチーフに一人2話づづ、合計で6つの連作ドラマを書いた。

地上波では今夜から6夜連続なのだが、BS-hiで昨夜の夕方17時から23時半まで、30分のニュース中断を挟んで6時間で一気に6話放送。

見てしまいましたよ。スクリーン下ろして。

6話もあるので、逐一感想を書いてはおれませんが、けっこう面白かった。実力のある3人の脚本化が、やはり他の二人を意識しながら書いた(であろう)6つの脚本は、どれも上出来。また、輪をかけて豪華なキャスティング。好き放題やっちゃったとういう感じですね。(中には何しに出てきたの、というようなちょい役大物もあり)。

実はほとんど縁のなかった野沢尚の2本が一番ドラマ的には面白かった。ユースケと深津絵里も上々。野沢尚が一番きちんと「連作」というコンセプトに忠実。

逆に三谷幸喜の2本は完全に単発のコメディ。浮き玉はそれなりに出番があるが、物語としては他の二人のストーリーには絡まない。もっとも2話、4話のこのコメディがなければ6時間も見続けるのはきつかったかも。

倉本は例によってやや説教臭い世界。「森が海を育て、海が森を育てる。川がその繋ぎ役」というテーマをはっきり正面に押し出していた。倉本だけで6本だったらたぶん途中で見なくなりそう。そういう意味で、今回の3人による連作という企画は「成功」と言ってもいいだろう。

ハイビジョンでしかも高速度撮影でとらえた「水」の表現はさすがにきれい。1年かけて日本の四季を素晴らしい映像で見せてくれます。

カラサワ堂怪書目録

今、読んでいるのが「冒険女王」。読みにくい本ではないのだが、年末の業務多忙でなかなか先に進まない。530ページもあるし。

で、土曜の午後は息抜きに部屋に落ちていた本書。

息抜きしました。

押尾コータロー「ドラマティック・ライブ」DVD

Amazonで買えば20%引きですのでお得です。

先月スカパーで一部紹介されていたが、期待通りに9:16のスクイーズ映像。ウチのシステムも悪いのだろうけど、画質は期待したほどではなかった。通常のビデオ撮影の上下を切って横に引き伸ばしただけだったりして。

音質はかなり再現されていました。ただ、パッケージには2chと5.1chが収録されていることになっているのに、5.1にするメニューがない。とりあえずはステレオで半分だけ見ました。

画面の切り替わりが早すぎて見るのが辛い。編集してる人の自己満足が感じられる。切り替わりの都度、視点が違うところに持って行かれるので見ていてしんどいです。

演奏は立派なもの。3000円だし知らない人はベストアルバムとして買ってもいいでしょう。

きせかえユカちゃん(5)

妻はほとんど興味なさそうな感じだが(むべなるかな)、夫は相変わらず感心しながら読んでいる。昨夜、会社でゲットして地下鉄の中でカバーもかけずに読んでいたが、傍から見ればりぼんコミックスを読みふける中年(しかも時々笑う)は、かなり変態に見えるのであろう。

登場人物にはっきりしたヒエラルキーがあるのだが、下位の階層のユカちゃんの姉やそのカレシのなんとも解脱したような服従ぶりが面白い。
主従関係は佐々木倫子のマンガでも笑いの構造的な部分を担っているのだが、上位に属する者が単なるわがままで下位を振り回すのではなく、生まれ持った女王的な求心力で周りを動かしているところが、この作品の特徴。悪気がない。

と、70年代の「だっくす」か「ぱふ」の投稿みたいなことを書いたりして。
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