昔は軍事がらみの冒険小説が好きでした。クランシーとかポロック、マクリーン、ヒギンズなんかを次々と読んでいたものです。年をとると非現実的なハラハラよりも、普通の人の心の機微みたいなものの方がしっくり来るようになって、だいぶ離れてしまいましたが。

で、この本は年末まとめ読み用に昨日買った一冊。久しぶりにその類のもの。帯に「一気読みを保障します」などと書いてあったので、つい。確かに一気に読んでしまいました。大変面白い。

高高度を飛行する300人乗りの超音速旅客機に、海軍のミサイルが命中。このミサイルは非合法の試験発射だったので、弾頭は積んでいなかったのだけど、高度6万フィートというほとんど宇宙みたいなところで旅客機を貫通。機内はすぐに減圧して無酸素状態。偶然トイレなどの与圧があるところにいた主人公が、この旅客機を操縦して無事に地上に下ろせるかどうかという話。

まあ、これならよくあるストーリーなんだけど、すごいのはそれを阻止しようとする3つの障害。ひとつは、非合法のミサイル訓練とそのミスを隠匿しようとする海軍の将校。もうひとつが、この事故による保険金の支払いを最小限に食い止めようとする航空会社の重役と担当の保険会社。このふたつが別々の考えで、瀕死状態で飛行する旅客機を海に墜落させようとする。

それだけならまだいいが(すでに相当よくないけど)、もうひとつ、この旅客機の乗客の多数が、機内の減圧無酸素状態で、脳に損傷を起こし、生存してはいるものの時に凶暴なゾンビのように主人公たちを殺して行くのだ。普通なら不運の被害者のはずなのに、あまりの描かれよう。

なんという恐ろしい小説。帯に偽りなしでした。